2014年03月07日

カフェで

カフェ

「ここのカフェが『ムーン・カフェ』って名前なんで、月夜な感じがちょうどいいと思って買ったんです。でもカフェ・カーテンですし、おうち用のカーテンには薄いかもしれませんよ」
そう言われてカーテンの生地に触れてみると、確かにレース・カーテンに近い手触りで、遮断の効果は期待できそうになかった。
「でも、かわいいよなー、この小さな花とこの黄色」
店長さんは穂摘に褒められて、うれしそうに笑っていた。

穂摘は、それからネットでも調べてみたが、なかなか同じものは見つからない。なんでもネットで見つかる時代と思っていたので、薄れゆくカーテンのイメージを忘れないうちに見つけたいと焦りを感じ始めていた。

一向に見つからないまま、あきらめかけていた頃。穂摘は、高校時代の同級生、七枝(ななえ)にバッタリ出くわした。七枝は、昔からセンスが良く、高校卒業後、デザイナーの専門学校に行った。そして今は服のデザインの仕事をしているという。
 
何より、穂摘が驚いたのは、七枝の持っているカバンだった。
「ななちゃん、そのカバン、どこで買ったん?」
「自分で作ったんよ」
もっと話しを聞きたくなって、穂摘は七枝をお茶に誘った。

七枝は、デザインの仕事をしているというだけあって、生地のことなど、とても詳しい。穂摘の目を惹いたカバンは、外側が、探していた黄色い生地で、内側に青い生地を縫い合わせ、二重にすることで、透き抜けている部分から、小さな青い花柄が浮き上がって見える。
「私も、この黄色い生地が気にいったやけど、一枚じゃ、服にもカバンにも薄過ぎて、で、この青い生地を重ねてみたら、めっちゃかわいくなって。試しにカバンを作ってみたんよ」
穂摘は、カバンの内側もみせてもらう。青い生地は普通のものだったが、黄色の生地よりは分厚くて、しっかりしていた。
  


Posted by 弘せりえ at 16:42Comments(0)カーテン
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