2014年03月06日

一人暮らし…

一人暮らしを始めた女性

桜のつぼみが膨らみ始めた頃。

岡野穂摘(ほづみ)は、大学を卒業して実家を離れ、一人暮らしすることが決まっていた。神戸の中心街からはちょっと離れているけれど、会社まで通勤圏内のワンルーム・マンション。

小さな部屋なので、家具は冷蔵庫と洗濯機、TVくらいで十分だった。それを、今年結婚する姉から貰い受けた。姉は数年一人暮らしをして、素敵な人を見つけた。昔から順風満帆な姉がうらやましく、そのご利益にあやかりものだ、と思う。また、そのおかげで引っ越し経費が浮いたことはうれしかったが、なんだか新品ではないもので新生活をスタートさせることが不満でもあった。

姉は、「贅沢やわ、全部タダで揃うのに文句言うなんて」と言う。母は、母で、姉の家財道具を一式実家に持ってかえられるのも困るらしく、「なるべくなら、あんたにそのまま使ってほしい」と言う。

しかし、母もさすがに、不満そうな穂摘を見て、幼少の頃から姉のお古ばかりが回って来た妹を可哀想に思ったのか、ベッドは新調してプレゼントしてくれるという。実家では、いまだに姉妹用の二段ベッドの下段を使っていた穂摘には、母の気持ちがとてもうれしかった。

そんな事情で、小物はなるべく自分で買うことにした。オシャレな棚、アクセサリー入れ、水回り品、食器類、そして、カーテン。

穂摘はカーテン選びに苦戦していた。ベランダの窓は西側。西に黄色はお金が貯まる、という風水の格言もちょっと気にしながら、自分の空間にぴったりはまるようなカーテンを探していた。

そんなある日の午後。
穂摘はふらりと神戸の街に買い物に出たが、あまりの寒さに温かいものが飲みたくなった。

もうすぐ社会人になる穂摘にとって、貴重な平日の昼間。たまたま入ったカフェの出窓に、薄い黄色のカーテンがかかっていた。小さな花柄が透き抜けていてかわいらしい。穂摘は思いきって、店長さんらしき女性に、どこで売っているのか聞いてみた。しかし、彼女は思い出せないという。


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Posted by 弘せりえ at 17:57│Comments(0)カーテン
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